ECサイトの売上が拡大していくと、実施できる施策の幅もどんどん広がっていきます。
一方で、現行のECカートの機能では「やりたい施策が実装できない」「機能面で物足りない」と感じる場面が増えていくものです。
新しい施策に取り組もうとしたときや、必要な機能を追加したいと思ったときに、今のカートでは対応できないと感じることが増えてきたなら、それはECサイトのカート移行を考え始めるタイミングかもしれません。
最近では、以前よりも高機能で拡張性のあるカートシステムがたくさん登場しています。そのため、多くの事業者がECサイトのカート移行を検討するようになっています。
しかし、カートの移行は、決して簡単なことではありません。顧客データの引き継ぎ、SEOへの影響、そしてコストや作業にかかる時間など、さまざまなリスクを慎重に考える必要があります。
この記事では、ECサイトのカート移行で失敗しないための完全ガイドとして、移行に最適なタイミングから、実際の作業の流れ、注意すべき点、そして費用の目安まで、わかりやすくご紹介します。
初めての移行で不安な方も、この記事を最後まで読んでいただければ、安心してスムーズな移行計画を立てられるでしょう。
ECサイトのカートを移行するべきタイミングとは?
例えば、ECサイトを運営する中で以下のような状況に心当たりはありませんか?もし当てはまるなら、移行を検討する時期かもしれません。
機能の不足や拡張性の限界を感じる
新しい機能を追加しようにも制限があったり、外部サービスとの連携が難しかったりすると、ECサイトの成長が滞ってしまう可能性があります。特に、クーポン機能、レビュー機能、定期購入といったマーケティング施策を強化したいのにできない場合は要注意です。
管理が複雑で業務負担が大きい
日々の受注処理や在庫管理、顧客対応に時間がかかりすぎているなら、無駄な運営コストがかかっている可能性があります。業務効率が上がらないまま売上だけが増えていくと、ヒューマンエラーやミスが増える原因にもなりかねません。
スマートフォン対応が不十分、またはデザインが古い
今やほとんどのユーザーがスマートフォンで買い物をする時代です。ECサイトがスマートフォンに最適化されていない、あるいはUI(ユーザーインターフェース)が古いデザインのままだと、ユーザーの離脱率が高まり、購入にもつながりにくくなってしまいます。
今のシステムで現状維持を続けた結果、「競合に顧客が流れてしまった」「せっかくのプロモーション効果が出ない」といった売上への影響が出てから、慌てて対応に追われるケースも少なくありません。
もし今のカートでは「売れる仕組み」が作れていないと感じるなら、早めに現状を見直し、将来を見据えた移行を検討し始めるべきです。
ECサイト カート移行の基本ステップ
ECサイトのカート移行は、大きく分けて「準備」「実施」「運用」の3段階に分かれます。それぞれのステップでやるべきことを整理しておくことで、無駄な手戻りやトラブルを防ぐことができます。
ステップ1:現状の課題を洗い出す
まずは、今のカートで感じている不満や問題点をリストアップしましょう。「操作性が悪い」「外部サービスと連携できない」「表示が遅い」など、具体的な課題が明確になることで、移行先で必要な条件も見えてきます。
ステップ2:商品・在庫情報を整理する
商品データの構成やカテゴリ、SKUの管理方法なども、移行時に見直す最適なタイミングです。情報が古いままだと新しいカートでも非効率な運営になってしまうため、データの整理・棚卸しを事前に行っておくとスムーズです。
ステップ3:移行先のカートを比較・選定する
自社の規模・業種・今後の展開にあわせて、必要な機能や連携可能なツール、費用感をもとに複数のカートを比較しましょう。BtoC向け/定期通販向け/越境EC対応など、自社に合った方向性での選定が重要です。
どのカートが自社とマッチするのかわからない場合は、カートベンダーに問い合わせたり、当社のようなECの専門会社に相談をすることで最適な提案をもらうことが可能です。
ステップ4:スケジュールと役割分担を決める
社内で誰がどこまで対応するのか、アウトソースはどの範囲で頼むのか、明確なスケジュールと責任範囲の設定は、トラブル防止につながります。特に繁忙期を避け、余裕ある計画を立てましょう。
ステップ5:テスト移行・公開後の運用準備
データ移行が終わったら、公開前に必ずテストを行いましょう。購入フローやメール通知、在庫連動など、ECサイト内の動作確認を入念に行い、問題がなければ本番公開へと移ります。
分析・計測タグや広告タグをこれまでのサイトに設置していた場合は、新しいECサイトにも忘れずに実装しましょう。
ECサイトのカート移行は、関係者や工数が想像以上に多くなります。
だからこそ、最初の段階でしっかり準備と段取りをしておくことで、失敗を防ぎ、スムーズなリニューアルにつながります。
ECサイトのカート移行時に注意すべきデータの取り扱い
ECサイトを移行する際、多くの事業者が悩むのが「データの引き継ぎ」です。とくに顧客情報や注文履歴などは、引き継げないケースが多く、 事前に注意点を把握しておくことが重要です。
パスワードは基本的に引き継げない
多くのカートシステムでは、顧客のパスワードは暗号化されており、新しいカートへの移行はできません。つまり、移行後は会員が「再設定」または「新規登録」する必要があります。これにより、再登録の手間によって離脱が増えることもあるため、あらかじめ登録促進キャンペーンや再登録特典を設けるなどの対策が効果的です。
注文履歴・ポイント・レビューの取り扱い
過去の注文履歴や保有ポイント、レビュー情報などは、カート間で移行可能なデータ形式が異なるため、事前に対応可否を確認することが必須です。
とくにポイントは、「失効した」と誤解されることがないよう、移行ルールや残高の明示を丁寧に行うことが信頼維持につながります。
告知方法はメール(またはLINE)+DMが理想的
ECサイト移行に伴う会員再登録やポイント失効の件は、早めにユーザーへ告知することが大切です。メールだけでなく、郵送DMなども活用することで、情報の見落としを減らし、トラブルを未然に防げます。データ移行に関するトラブルの多くは、「事前に知らされていなかった」「説明がなかった」ことが原因です。
ECサイト移行の成功は、単にシステムを切り替えることではなく、既存顧客にストレスを与えない移行体験を設計することにあります。
ECサイトのカート移行にかかる費用と期間
ECサイトのカート移行には、システム使用料以外にもさまざまなコストがかかります。また、想像以上に準備〜公開までのスケジュールが長期化するケースもあります。
初期費用の目安
ECサイトのカート移行にかかる費用は、ショップの規模や仕様、どこまでを委託するかによって大きく異なります。また、テンプレートを使うか、フルスクラッチで構築するかによっても費用が大きく変動します。
たとえば、小規模なショップ(商品数100点以下)でテンプレートを活用する場合は、50万〜100万円前後が一般的な目安です。一方、中〜大規模のECサイトでフルスクラッチ構築+外部連携を行う場合は、1,000万円以上かかるケースも珍しくありません。
また意外と社内での作業工数や調整にかかる手間なども見落とされがちです。
- 商品データの整備や画像撮影、画像作成
- マニュアル整備・スタッフ教育
- テスト作業や公開後の初期対応
このように、人的リソースも多く消費するため、移行時期の見極めやスケジュール調整が重要になります。
全体のスケジュール感
小規模なカート移行プロジェクトでは、以下のような期間が目安です。
作業内容 | 期間の目安 |
課題整理・要件定義 | ~1か月 |
構築・設定作業 | 2〜3か月 |
テスト〜公開準備 | 2週間〜1か月 |
合計 | 約2〜3か月程度 |
※ただし、ショップ規模やカートの種類によって前後します。
「思ったより工数がかかった」「余分な出費が出た」とならないように、スケジュールと費用は早い段階で概算を立てておくことが大切です。
カート移行経験のあるEC専門会社やWeb制作会社に 一度相談してみるのもおすすめです。
カート移行後のトラブルを防ぐチェックリスト
ECサイトのカート移行は公開した後の対応次第で売上や信頼性に大きな差が出ます。
よくある見落としポイントを事前にチェックしておくことで、トラブルの発生リスクを大きく減らすことができます。
URL構成とSEOの引き継ぎ
旧ECサイトとURL構成が大きく変わる場合は、リダイレクト設定が必要です。これを忘れると、検索順位の低下やアクセス数の激減につながるため注意しましょう。また、meta情報やaltタグの設定も見直しておくと安心です。
旧カートの契約終了タイミング
新カートに移行してすぐ旧カートを解約すると、「まだ残っていた注文データにアクセスできない」「返品・返金処理ができない」などの問題が起こる可能性があります。
最低1〜2か月は並行稼働させることをおすすめします。二重契約のコストは発生しますが、信頼維持のためには必要なコストといえます。
BI・CRMなどの外部ツール連携
移行先のカートが、今まで使っていたBIやCRMツールと連携できるかを事前に確認しましょう。特にMA(マーケティングオートメーション)や広告連携の部分で不一致があると、運用効率が大きく落ちてしまうケースがあります。
定期購入商品の再契約リスク
定期購入商品を扱っている場合、契約情報の引き継ぎが難しいことがあります。ユーザー側に再度契約してもらう必要がある場合は、その旨をあらかじめ案内し、スムーズに再契約できるような導線を用意しておきましょう。
移行に伴う細かいミスや漏れが、ユーザー体験を大きく損なってしまうことも少なくありません。だからこそ、機能面だけでなく運用・接客目線での最終チェックを怠らず、移行後も安定して運営できる体制を整えておきましょう。
ECサイトのカート移行でよくある失敗とその回避策
ECサイトの移行には、多くのメリットがある一方で、事前準備が不十分だと売上や顧客体験に悪影響を与えるリスクも存在します。ここでは、実際にありがちな失敗例とその回避方法をご紹介します。
失敗例1:移行後に売上が大きく落ちた
移行と同時にSEO評価が下がったり、UI変更によってユーザーが購入しづらくなったりすることがあります。
対策例:
– URLのリダイレクトを正しく設定する
– UIやカートの操作性を公開前にユーザーテストする
– SNSやメルマガでリニューアルの案内を強化する
失敗例2:カート機能が想定と違った
「◯◯ができると思っていたのに使えなかった」 「管理画面が複雑で使いにくい」など、機能や操作性にギャップを感じるケースもあります。
対策例:
– デモ環境や無料トライアルで事前確認を行う
– 競合サイトの使用事例を調査する
– 必要機能を洗い出し、要件定義を明文化しておく
失敗例3:顧客データ移行で信頼を失った
再ログインできない、ポイントが消えた、購入履歴が見られない――
こうした“つまずき”が、リピーター離れを引き起こすこともあります。
対策例:
– 会員への案内を事前にしっかり行う(メール+DM)
– 移行後のサポート体制を強化する
– ポイント失効や再登録の補填施策を用意しておく
失敗事例から「自社に必要な準備」を逆算する
他社の失敗例は、自社が見落としやすい盲点を知るヒントになります。ECサイトのカート移行はただのシステム変更ではなく、“お客様との関係性”を保ちながら成功させるべき大事なプロジェクトです。
ECサイトのカート移行を成功させるためのパートナーの選び方
ECサイトのカート移行は専門性が高く、社内だけで完結させるのはハードルが高い作業です。とくに中〜大規模な移行では、信頼できる外部パートナーの存在が不可欠です。
カート移行の実績がある制作会社を選ぶ
Web制作会社やシステム会社の中でも、「ECサイトのカート移行の実績」があるかどうかは非常に重要なポイントです。単なるデザインリニューアルではなく、商品・顧客データの扱いやSEOの知見が求められるため、EC特化の実績や事例を確認しましょう。
またECサイトのカート移行は「言われたことをやるだけ」ではうまくいきません。自社の課題を汲み取りながら、要件整理や仕様設計から並走してくれるだけでなく、 移行後の売上拡大を見据えた運用・マーケティング面でのサポートを提供できるパートナーであれば、 手戻りも少なく、移行後の成長スピードも格段に高まります。
サポート体制とコミュニケーションの相性を確認
カート移行中は日々のやりとりや細かい確認が必要になるため、レスポンスの速さや担当者の対応力も見逃せないポイントです。また、移行後の運用フォローまで視野に入れて、保守・運営サービスの有無もチェックしておきましょう。
ECサイトのカート移行は一時的な制作業務ではなく、事業の土台を再構築するような大規模プロジェクトです。一見コストがかかっても、的確に対応してくれるプロに任せることで、トラブルや無駄な修正を避け、結果的に費用対効果の高い移行が実現します。
まとめ
ECサイトのカート移行は、決して簡単な作業ではありません。
しかし、しっかりと準備をして正しいステップを踏むことで、売上アップや業務効率化など、大きな成果を生むきっかけになります。
今回ご紹介したように、
- 「カートを移行すべきタイミングの見極め」
- 「注意すべきデータの扱い」
- 「費用と期間の見積もり」
など、ひとつひとつの工程を丁寧に進めることが成功への近道です。
また、カート移行は専門知識と経験が求められる分野でもあります。私たちはこれまで、多くのECサイトのカート移行を支援してきた実績があり、要件整理から構築、公開後の運用まで一貫してサポートしています。
- 「今のカートに不満があるけど、どこから手をつけたらいいかわからない」
- 「移行したいけど、社内にリソースがない」
そんなお悩みをお持ちでしたら、お気軽にご相談ください。
Written by
bay_sugimoto
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