1.なぜ「ペルソナ通りに作ったのに売れない」のか
ECのページ制作やディレクションでは、例えば、「30代女性・共働き・子育て中」のようなペルソナ設定が王道とされています。
しかし実際のEC運用現場では、ペルソナ通りに作ったのに、なぜか刺さらない・売れないというケースが少なくありません。
理由はシンプルで、
人は“属性”ではなく“状況”でモノを買っているからです。
たとえば、同じ30代・子育て中の女性でも、
- 朝の忙しい時間にイライラしているとき
- 赤ちゃんを起こしたくないとき
- 来客前で焦っているとき
では、同じ商品でも求める価値がまったく変わります。
EC運用で起きがちなズレは、「誰に売るか」は決まっているのに、「どんな困った瞬間を解決するのか」が曖昧なまま進んでしまうことです。この設計のズレが、ECの売上が伸びない大きな原因になります。
そこで重要になるのが ジョブ理論 です。
2. ペルソナ設計の限界と、ジョブ理論という考え方
ペルソナ設計は、決して間違いではありません。ECにおいてターゲットを定めることは重要です。ただし、ペルソナはあくまで前提条件にすぎません。
- ペルソナ:誰が
- ジョブ:どんな状況で、何を解決したいか
ジョブ理論では、「人は商品を買うのではなく、ある状況を前に進めるために“雇う”」と考えます。
重要なのは、1人のペルソナが、複数のジョブを持つという前提です。
たとえば同じ掃除機でも、
- 子どもの食べこぼしをすぐ片付けたい
- ペットの毛をまとめて取りたい
- 来客前にとにかく時短したい
これらはすべて別のジョブです。
ECページで「掃除が楽になります」と一括りにしてしまうと、どのジョブにも深く刺さらない状態になります。
3. インスタに学ぶ「ジョブ起点のディレクション」
ジョブ理論の実践例として、最も分かりやすいのが Instagram広告や投稿です。
たとえば水拭き掃除機。ECページではよく、
- 水拭きできる
- 掃除が楽
- 時短になる
といった機能訴求が並びます。一方、インスタでうまくいっている訴求はこうです。
赤ちゃんが食べこぼす
→ すぐ拭ける
→ 掃除に時間を取られない
→ イライラしない
→ 赤ちゃんに怒らなくてすむ
ここで売っているのは、掃除機そのものではなく「感情の変化」です。
- 楽になる → ×
- 怒らなくてすむ → ○
EC改善のヒントはここにあります。機能を並べるのではなく、ペルソナが置かれている状況の改善を描くこと。インスタのディレクションが優れている理由は、最初から 「困ったシチュエーション」から入っている点にあります。
これはまさにジョブ理論そのものです。
4. ジョブを軸にしたEC設計の基本要素
設計とは「翻訳作業」
ジョブ理論をECに落とすとき、重要になるのは次の整理です。
- 検索キーワード
- ニーズ
- ベネフィット
検索キーワード
= 困りごとが言語化されたもの
例:
「水拭き 掃除機 赤ちゃん」
これは商品を探しているのではなく、状況の解決策を探している検索です。
ニーズ
= 解決したい状況そのもの
- 食べこぼしをすぐ片付けたい
- 床を清潔に保ちたい
ベネフィット
= 解決した結果、どうなれるか
- 怒らなくてすむ
- 気持ちに余裕が生まれる
- 育児のストレスが減る
EC設計とは、商品特徴をベネフィットに翻訳する作業です。この翻訳精度を高めることが、
EC改善の第一歩になります。
5. ジョブから作るカスタマージャーニー
ジョブを起点にすると、ECのカスタマージャーニーは非常にシンプルになります。
- 困りごとが発生する
- 検索する
- 比較する
- 「これなら解決できそう」と感じる
- 購入する
- 購入後に安心・満足を得る
重要なのは、購入がゴールではないという点です。
多くのレビューが語っているのは、「使った結果、どう変わったか」です。EC改善では、この一連の流れを意識することで、
- 検索キーワード
- ファーストビュー
- 商品説明
- レビューの見せ方
すべてに一貫性が生まれます。
6. 競合調査は「同じ商品」ではなく「同じジョブ」で見る
ジョブ視点で見ると、競合の定義も変わります。
競合は同じ商品を売っている店ではなく、同じ困りごとを改善しようとしている存在です。
たとえば先ほどの水拭き掃除機の例であれば、競合は必ずしも「別メーカーの水拭き掃除機」だけではありません。
・使い捨てウェットシート
・床用モップ
・ロボット掃除機
・「あとでまとめて掃除すればいい」という選択肢
これらすべてが、「赤ちゃんの食べこぼしをどう乗り切るか」というジョブの競合になります。
そのため競合調査では、価格やスペックの比較だけをしても、本質は見えてきません。
競合調査で見るべきポイントは、
- どんなシーンから話を始めているか
- どんな感情に寄り添っているか
- 価格以外で何を理由に選ばせているか
Instagram投稿やレビューは、ジョブを見つけるための宝庫です。
「なぜこれを買ったのか」
「どんな場面で助かったのか」
ここに答えが詰まっています。
7. ジョブ理論を使ったページディレクションの進め方
ジョブ理論を取り入れると、ディレクションの迷いが大きく減ります。
最初に決めるべきは、どの“困った瞬間”を取りにいくのかです。
これが決まらないまま制作を進めると、
・あれも伝えたい
・これも強みだから入れたい
となり、結果として「何も刺さらないページ」になります。
ジョブ起点で考えた場合のページ設計例
例:水拭き掃除機をECで販売する場合
① ファーストビュー:ジョブの提示
×「水拭き対応・時短・高性能」
○「赤ちゃんの食べこぼし、毎回イライラしていませんか?」
最初に見せるのは、商品ではなくユーザー自身の状況です。
② 商品説明:その解決手段としての商品を提示
・サッと拭ける構造
・準備や片付けに手間がかからない
・思い立った瞬間に使える
ここではじめて、「だからこの商品が役立つ」という文脈を作ります。
③ 画像:シーンの再現
・床に食べこぼした直後
・子どもがまだ椅子に座っている状態
・親が慌てず対応している様子
スペック画像よりも、「使われる瞬間」が伝わる画像が有効です。
④ コピー:感情の言語化
・怒らなくてすむ
・気持ちに余裕が生まれる
・育児のストレスがひとつ減る
機能説明で終わらせず、「使った結果、どう変わるのか」を言葉にします。
「何を伝えるか」ではなく、「どのシーンから入るか」。
これが決まれば、デザイン・コピー・構成の判断基準がブレません。
8. EC改善は、設計から見直すことが第一歩
ジョブに立ち返ると、ディレクションは迷わない
売れない原因は、文章やデザインの良し悪しではなく、設計の出発点にあることがほとんどです。
- ペルソナではなく、シーンを見る
- 機能ではなく、感情の変化を見る
- 商品ではなく、改善される状況を見る
これは楽天ECでも、SNSでも、広告でも共通です。
ジョブ理論は考え方ではなく、運用に使える「設計の軸」です。
もし、「どこを改善すべきかわからない」「ECの改善施策を続けているのに成果が出ない」と感じている場合は、まずは設計から一度、弊社にご相談ください。
現状を整理したうえで、どこから改善に着手すべきかを明確にし、成果につながるEC運用をご提案します。





